瀉血について
人は呼吸によって血液中の二酸化炭素と酸素が交換され、血液が浄化される仕組みになっている。いかなる病的疾患を持った人であっても、酸塩基平衡の原則によって、血管内のP.Hに変動はなく一定に保たれ、健常者であれ病人であれ、静脈から採血した血液は濁ることなく悪い血液ではない。
ところが、病的疾患のある病巣部にとどまる血液が酸塩基の平衡を失い、その病巣部の血液に異常が惹起されると悪い血液となる。これを東洋医学では古来より血と称している。
病的疾患のない者でも、生活環境によっては多少の血が生じることはあるが、速やかに生体恒常性機能によって処理される。
お血とは、酸素と二酸化炭素の交換時に取り残され黒く濁っている悪い血液で、経絡と相関的要素をもち、経絡線条を通り道として経穴に向かって流れ体表面に集まる。
昔、背中の首に近い部分にヒルを吸いつかせ血を吸わせる治療法があった。これもお血処理といってもよい。
体表面に取り残された赤血球は二酸化炭素を含み、赤血球中の水素とヘモグロビンとの間に化学反応が起こり、OH基とカルボニルヘモグロビンを有する、赤血球と血漿に分離される。
ヘモグロビン → CO-O ← H
HbCO → カルボニルヘモグロビン OH基
分離されたカルボニルヘモグロビンは、正常な機能を果たせず炭化色素となり、酵素の働きによって細かく顆粒化されるが、この時酵素の働きを良くするために体内温度(38℃)を上昇させる必要がある。
一方、血漿部分のOH基はP.Hが上昇し表皮の酸性に接し中和され、血液のP.H値と同等になる。このように分解された赤血球は、静脈より腎臓に運ばれネフロンを透過して尿より排出される。
お血処理として古来よりさまざまな方法があり、古くは牛のフンを板状に固め火に熱し適温にして背中に当てがう。又、45度以上の熱い風呂によるインタバル入浴法、その他乾布摩擦や運動による体温上昇などがある。いずれの方法も体内温度を上げ酵素の働きを良くする為のものであり、生体恒常性機能を働かせ、健康維持に役立たせていたのである。
東洋医学には血を吸いだす方法に瀉血がある。
瀉血は鍼灸のようにツボに刺激を与え免疫の働きを良くし、さまざまな疾患を改善させるものとは違い、免疫の働きとは関係なく直接血を吸引し、疾患を改善させるものであって、明らかにアルカローシスを呈し病巣部の悪化をまねき、自力で血処理が出来ない場合は非常に有効である。
瀉血に於いても、鍼灸同様経絡線条のツボの上に行うことが重要で無節操に行っても意味をなさない。 しかしながら、継続的に行うことはかえって免疫的効果を阻害する恐れもある。
東洋医学に於ける鍼灸、瀉血は、西洋医学からすれば野蛮な行為のようにみえるが、慢性疾患に対する治療効果は結果として良く、多大に評価されよう。 |
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