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はじめに

 人類狩猟時代に野山をかけめぐり狩りを行っていた最中、トゲのある植物などに触れ身体にトゲが刺さることは頻繁にあったはず。それが偶然ツボであった。そうしたところ病んでいた部分が改善されたことに気が付き、これを契機に身体にトゲを刺すことが研究され、中国5,000年の歴史の中で鍼が誕生したのではないかと想像する。ツボの発見は東洋医学の神髄であり神秘につつまれている。何故ツボに鍼を刺すことで治療効果が得られるのか、謎も多く想像科学の世界で解き明かしてみよう。

 まず皮膚は身体の表面にあって外からの侵入者を防ぐ働きをするものと考えられてきたが、単なる防御壁ではなく、一旦緩急あれば異物を捉え免疫系に信号を送り、免疫の働きをうながすセンサー的要素を持った一つの臓器と云える。

皮膚を脅かすものに放射線、紫外線、物理的な温熱、寒冷などの外、ウイルスや細菌などの脅威と戦って均衡を保つことが皮膚の役割であり、免疫応答の要を荷っているものがランゲルハンス細胞である。

更に皮膚は東洋医学で云うツボが存在する。ツボは経絡線条につながっていて、普通の皮膚のところよりも神経や血管が太くリンパ管も多く集中し、刺激に反応し易いように出来ている。
ツボとツボ以外の皮膚の大きな違いは、免疫系に於いて、普通の皮膚は免疫細胞に攻撃の指示を出すランゲルハンス細胞があり、ツボに於いては神経伝達物質を分泌し、皮膚以外の疾患に対して免疫細胞の活性を高め、機能を向上させるサブスタンスーPという神経線維がリンパ管に並行して存在している。

 鍼の目的は対処療法的考え方ではなく全身の機能調節であり、鍼治療は神経が集中しているツボのポイントに鍼を刺し刺激を与えることによって、サブスタンスーPがリンパ節に向かい遊走してきた皮膚のセンサーであるランゲルハンス細胞とリンパ節で出会い、サブスタンスーPの情報を受けて脳に知らせる。脳は神経線条の免疫応答を受け、免疫動員現象が起き全身の機能調節にあたると考えられる。

興味深いことに、鍼は自己免疫疾患(例えばリューマチ)にも効果がある。これは、免疫機能を抑制させることを意味し、免疫をコントロールする仕組みを持っている。即ち免疫を出動させる(アクセル)又は抑制させる(ブレーキ)。このアクセルとブレーキの関係が免疫応答の中で、アデノシン3.5リン酸塩が関与し調節しているのではないかと考えられる。

 鍼は人によって効果のない場合がある。これは経絡の神経伝達上に不具合が生じ問題が発生したのであって、情報伝達には細胞間コミュニケーションを計る糖鎖が関係しているので、鍼を刺す行為の良し悪しだけの問題ではない。

糖鎖は8種類の物質によって構成されていて、一つでも欠落した場合は情報伝達が出来なくなる。電気のブレーカーが落ちると、その部屋の電気は使用出来ないのと同様に、一つの経絡線条の神経線維細胞上の糖鎖に欠陥が生じれば、その経絡の脈は不通となり、免疫応答はなされず、免疫は働かないことになる。従って効果はでないのである。
一般的に糖鎖は、バランスの良い食事を摂取していれば不足することはないと云われているが、食環境によっては、グルコース、ガラクトースを除いて十分に糖鎖が補充出来ず、糖鎖のバランスが崩れ異常が発生する。

 中国では古来よりツバメの巣が漢方薬などに使用され、貴重な食材として珍重されている。海藻とツバメの唾液によって出来た巣の成分が糖鎖の宝庫であり、ツバメの巣を摂取することによって補充されるのではないかと思われる。

(参考) グルコース・ガラクトース・マンノース・フコース・キシロース・N-アセチルグルコサミン
      N-アセチルガラクトサミン・N-アセチルノイラミン酸

おわりに

 鍼は身体にとってみれば異物である。皮膚の上から鍼を刺すことにより、ランゲルハンス細胞のレセプターに触れる菌やウイルスと違って、抗原提示はないものの異物であることには違いない。
鍼本来の目的とは異なるが、白血球は鍼に対して攻撃を開始する。従って鍼を刺した周辺の疾患を同時に改善させるという副産物があるところが面白い鍼の巧妙というべきである。

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